今回は全身の筋力を使い高重量を上げることを目的としたパワーリフティング寄りのベンチプレスの解説になります。ベンチプレスを単なる「胸トレ」ではなく、全身運動として捉え、より大きな重量を扱えるようになりたい人向けの内容です。
もし「胸の筋肉だけを集中的に鍛えたい」のであれば、ダンベルフライやダンベルプレスをやった方が良いですが、「効率的にでかくしたい」「男としてパワーを付けたい」のであればパワーリフティングのベンチプレスがおすすめです。使用重量が上がると勝手に筋肉がついてきます!
※今回のやり方ですがベンチプレスは必ずこのとおりにやらなくてはいけいないというものではありません。人それぞれで自分にあったやり方があります。これはあくまでも出発点であり一般的な方法をまとめたものです。
セーフティーバーを忘れずに
まず最初にセーフティーバーを自分に合う高さにセットしてください。
これを忘れると最悪命を落とします。
- 胸を思いっきり張った状態(アーチを作る)で胸より低い位置
- 首よりも高い位置
この位置にセッティングしてください。
バーバルカラーについて
一人でベンチプレスを行う場合(例 ホームジム、24Hジムの深夜もしくは早朝で周りに誰もいないとき)
バーバルカラーは付けないこと。
何らかの原因でセーフティーバーが機能しないときはあります。
(例えばラックの支柱とセーフティーバーの間に隙間があった場合)
このときバーを思いっきり片側に傾ければウェイトが外れるので生き残る可能性が高くなります。
アーチの作り方
ベンチプレスのアーチについては賛否両輪あるテーマですが、全身の力を使ったパワーリフティング向けのベンチプレスのやり方の場合は全力でアーチを作ってください。
「可動域が狭くなる」と反対する人もいますが、アーチを作ることで大胸筋が効果的に使われ、肩への負担が分散されます。
まずベンチに寝たらアーチを作るのですが腰を反らすのではなく、胸を反らす意識で行いましょう。
肩甲骨を下げて胸を張る
肩甲骨には4種類の動きがあります。
- 挙上:肩をすくめる
- 下制:肩を下げる
- 外転:肩甲骨を外側に開く
- 内転:肩甲骨を内側に寄せる

ベンチプレスでは、肩甲骨の内転と下制をすることが重要です。
肩甲骨を下制させるためには乳首を顔に近づける意識をしてみましょう。
尻と足に力をいれて頭方向へ地面をける
肩甲骨の位置は固定したまま頭側へ圧力をかけます。
(ベンチプレス終了までこの状態をキープ)

これをレッグドライブといいます。
レッグドライブを使う際、お尻は浮かないように注意です!
尻が浮くとトレーニングの効果が薄くなります。
尻上げベンチプレスは上級者が意図的にやる場合がありますが、基本的には浮かないようにしましょう。
頭の位置はバーの下に鼻
アーチを作って足に力を入れたら、バーが鼻の位置にくるように調整します。


↑NG例①
バーの位置が目にある場合、スタートポジションに持っていくまでの距離が長くなります。この場合ベンチプレスをスタートする前から体力を消耗してしまいます。

↑NG例②
バーの位置が口にある場合、使用するバーベルフックによりますがスタートポジションでバーベルフックにバーが当たる可能性あり。
足の位置はすねが地面に対して垂直
基本としては垂直ですが、足の裏全体がついて力がいれやすい位置であればどこでもOKです。
自分に合う足の位置を探してみてください。
💡注意点
足の位置を頭側に近づけると更にアーチを高くできますが腰が反ってしまい腰痛の原因になります。
グリップを決める
アーチができたらグリップを決めます。
グリップ幅は81cmラインに薬指か人差し指
グリップ幅は、個人の好み・快適さ・力の入りやすさ によって決まります。
初心者の場合、グリップ幅がわからないと思いますので81cmライン(ローレット加工されていない5mmくらいの線)に中指か薬指を合わせるのがオススメです。

これはほとんどの人にとって中程度のグリップ幅となりますので、ここを基準に広げたり狭くしたりして快適な幅を見つけてください。
(パワーリフティングの公式ルールに準じて、グリップ幅は81cmラインに人差し指までとしましょう。それ以上は広くならないように調整してください。)

※バーベルによっては91cmラインになっている場合があります。
手首はわずかに寝かせる
手首を少し寝かせるとバーが手の中で安定します。
手首を寝かせすぎると、バーが手のひらの奥に乗りすぎてしまい、危険です。これはコントロールが効かなくなったり、手首を痛めたりする原因になります。

少し内側にひねって握る
グリップ幅を決めたら次はバーの握り方を決めます。
一般的には次の3種類がありますができればブルドッググリップで握ってください。
(肩が痛む場合はスタンダードグリップでOKです)
ブルドッググリップ:手を内側に回転させて肘を外側に向ける。バーを手のひらに乗せるように握る。
スタンダードグリップ:手首をバーに対して垂直に持ちます。一般的な握り方。
サムレスグリップ:親指を巻き付けずほかの指と同じ方向に向けた握り方。

ラックアップ
ラックアップとはバーベルをラックから外す動作です。
息を吸い込む
ラックアップ前に息を大きく吸い込み呼吸を止めます。
息を大きく吸い込むことで胸郭が広がり、胸の圧が高まり体幹が安定します。
(息を吸わない時と比べてラックアップが軽く感じます)
そして呼吸を止めることにより腹圧を高め、腰や背中への負担を軽減し、怪我のリスクを下げる効果もあります。
ラックアップする
肩甲骨の位置をキープしたまま、上腕三頭筋を収縮させる意識でラックアップする。
肩が前に出ないように注意すること(フォームが崩れる原因になる)
そのためにはバーバルフックの位置が高すぎない位置に設置することも重要です。

バーベルフックの高さが合っていなかったら調整しましょう
バーを肩関節の真上まで移動する
バーをラックアップしたら腕が地面と垂直になる位置に移動します。

バーを胸まで下ろす
ラックアップ前に息を吸い込みましたがバーを下ろす前に再度呼吸をしてもOKです。大きく息を吸い込み最低1レップ終わるまでは息を止めます。
肘の角度は45度前後を目安
バーを下ろすときに肘が真横(90度)に開かないように。
肘の角度は 45度前後を目安に!(狭すぎる・開きすぎると怪我のリスク)

バーの軌道はわずかに斜め
バーの軌道は横から見たときに少し斜め、もしくは足側に流れる”J”カーブを描くように。
※肘の角度が45度前後であれば自然にそうなるはずです。
バーの軌道が真下に直線的に落ちるのであれば肘が90度に開いていることになります。(肩を痛める!)

ボトムで肘の位置はバーの真下

ボトム(バーを下げた状態)のチェックポイントとして、肘の位置がバーの真下にあるようにしましょう。
つまり前腕が地面に対して垂直です。
もしここで角度が付いている場合は怪我の原因になります。
気持ち胸で止める
胸でバウンドさせるベンチプレスはトレーニングの効果が薄くなるため、0.5秒ほど止めるやり方を推奨します。
0.5秒は傍から見ると止めているようには見えないかもしれませんがそれでOK。
止めるという意識だけでもバウンド防止になり効果が上がります。
バーを上げる
背中をベンチに押し付ける意識
胸に付いたらバーを上げますがこの時の意識が重要です。
バーを上げる意識だと、どうしても押しだすイメージになってしまい肩が前に出てしまいます。(フォームの崩れ→怪我)
そうではなく自分の目の前に壁があるとイメージし、自分の体を地面に押し付ける意識です。
そうすれば最初につくったフォームが崩れずに継続できます。
バーが上がる軌道は下ろすときと同じ
つまりスタートポジションと同じ位置に戻ります。
真っ直ぐ上げるは間違いです。
ロックアウト
ロックアウトとはバーを完全に上げ切った状態のことです。
- 肘を完全に伸ばす
- 肩は前に出ないこと
これで1レップ完了です。
呼吸について
動作中は息を止めたままです。
狙いはバルサルバ効果。(体全体の圧力を高めパワーアップと怪我予防になる)
息継ぎをする場合はロックアウト後に行います。
余裕があれば息継ぎなしで次のレップに移行しても問題ありません。
終わり方
ラックの支柱にバーを当てて→下げる
規定のレップが終わったら終了しますが、バーの戻し方を間違うと大事故に繋がります。
ベンチプレスは限界まで追い込むこともあります。パワーが無い状態でゆっくりとフックに乗せにいくような戻し方は万が一外したときに危険です。安全なやり方は
- 腕を伸ばしたまま頭側に倒してラックの支柱に当てる
- (このとき結構音がします)
- 音がしたらそのまま真下に下ろす
これで安全にベンチプレスを終了できます。
シューズについて
ベンチプレスでは、足をしっかりと踏ん張ることが重要です。
滑りにくく、ソールが硬いシューズであればなんでもOKです。

このような足袋靴が安くてオススメ。
近くのワークマンかホームセンターで買いましょう。
まとめ
- ステップ1アーチを作る
- ベンチに寝る
- 肩甲骨を下げて胸を張る
- 尻と足に力をいれて頭方向へ地面をける
- 頭の位置はバーが目と口の間
- 足の位置はすねが地面に対して垂直
- ステップ2グリップを決める
- グリップ幅は81cmラインに薬指か人差し指
- 手首はわずかに寝かせる
- 少し内側にひねって握る
- ステップ3ラックアップ
- 息を吸い込む
- ラックアップする
- バーを肩関節の真上まで移動する
- ステップ4バーを胸まで下ろす
- 肘の角度は45度前後を目安
- バーの軌道はわずかに斜め
- ボトムで肘の位置はバーの真下
- 気持ち胸で止める
- ステップ5バーを上げる
- 背中をベンチに押し付ける意識
- バーが上がる軌道は下ろすときと同じ
- ステップ6ロックアウト
- ここで呼吸をする
- ステップ7レップを繰り返す
- ステップ8終了
- ラックの支柱にバーを当てて→下げる
何度言いますがこれが「正解」ではありません。
自分にあったやり方が必ずあります。
それを見つけるためには様々なやり方を試し何回も練習することです。
そうすれば自然にベンチプレスがうまくなり自分にあったやり方を修得できることでしょう。
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